2018年6月9日土曜日

01_ネクロフィラスな人々

悪人って、悪い奴がつくるんですね」。
➽ ペネロープ・ガルシア「クリミナルマインド」

ネクロフィラスな人間は、過去に住んで未来には住まない。彼らの感情は本質的には*感傷である。すなわち彼らは昨日まで持っていた感情、あるいは持っていたかに信じている感情の記憶を心に抱いている。彼らは「法と秩序」の冷淡な信奉者である。彼らに価値あるものは、我々の一般的生活に関連を持つ価値とは正反対のものである。すなわち生ではなくて、死が彼らを興奮させ満足させる

ネクロフィラスな人の特徴は、力に対するその人の姿勢である。シモーヌ・ヴェイユの定義によれば、力とは人間を屍体に変豹させる能力であるという。性欲が生を創造しうるように、力は生を破壊しうる。人間の力にはすべて、煎じ詰めると殺人への物理的な力がその根底にある。私がある人を殺さず、その自由を奪うだけであったとしよう。またある人を慴伏(しょうふく)させるとか、その所有物を奪ったとしよう、だが何をしようと、私のこれらの行為の背後には、殺しうる可能性を持つ力と、殺すことに喜びを感ずる気持ちが必ず存在する。

死を愛好する者は必然的に力を愛好する。彼にとって人間の最大の目的は、生を付与することではなくて、生を破壊することであり、力の使用は、強制された一時的行為ではなくて、それ自身生きる道なのである。

ヒトラーやスターリンのような人間が影響力を持つのは、まさに彼らの殺人に対する無制限な能力と、それに対し喜び勇む積極性にある。この理由から、彼らは死を愛好する人々に愛されたのである。それ以外の大衆は彼らを恐れるか、

あるいは彼らの恐ろしさを認識するよりはむしろ賞賛しようとした者が多く、また別の人たちは、こうした指導者のネクロフィラスな素質に気づかず、彼らの中に建設者、救世主、良き父親を見たのである

もしこのネクロフィラスな指導者たちが、建設者や保護者的態度をとらなかったと仮定したら、彼らに魅了された人々は、彼らの権力の獲得にそれほど援助しなかっただろうし、彼らに追放された人々は、直ちに彼を没落させてしまったであろう
➽ エーリッヒ・フロム「悪について」紀伊國屋書店より

*感傷ー物事に感じやすく、すぐ悲しんだり同情したりする心の傾向。
(デジタル大辞泉より)

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